鞆の浦
暮らしの残る町
鞆の浦は、広島県の東部、瀬戸内のほぼ中央に位置し、潮の変わり目にあることから海上の要衝、「潮待ちの港」として栄えてきました。江戸時代に最盛期を迎え、昭和40年代までは、劇場、映画館、遊郭も備えていました。また、景勝地としても、その佳景は万葉集に詠まれ、古くから愛されてきました。
町の成り立ちは、突出したお金持ちや武士、貴族によって作られたものではなく、町民によって発展してきたことにより、一時代で止まったものではない積み重ねの歴史と風土を有しています。現在も、波の音、暮らしの音、潮の香りが混ざり、画一化された観光地ではない、ゆったりとした時間が流れています。
海を取り囲むように町が出来ていて、その区画は江戸時代からほぼ変わっていません。
路地には暮らしの気配と香気が漂い、懐かしさと独特な世界観へと導かれます。
年に幾多となく祭があり、独特な風習とそれに基づく独自の文化があります。
また、そのほとんどが神事であり、形式化や集客化されたものではなく、町と人々を繋ぐ本来の意味を保ち続けています。
町を纏う独特の空気感に目を向けて、時間や予定、目的に縛られるのではなく、羽を休めて、ぼーっとする。
そんな過ごし方の似合う町だと思います。